ASMR Media マガジン

YouTubeのASMR規制についてのまとめ。ASMR規制は厳しくなった?注意点は?

2022/06/08 更新

ここ数日、YouTubeのコミュニティガイドラインの「ASMR動画がポリシー違反となる」という記述が話題になっています(ITmedia)。

ポリシー違反となれば、動画の削除や収益化の剥奪、チャンネル停止など厳しいペナルティが課せられてしまうかもしれません。 このページでは、具体的にこの記載があるポリシーについて見ていきます。

「YouTube コミュニティガイドライン」とは?

YouTube コミュニティガイドラインは、YouTubeで動画の公開やライブ配信をしたり、動画や配信へコメントなどをする際に守らなければいけないポリシーをまとめたものです。

例えば、犯罪行為やいやがらせを助長するような動画や、誤った情報を広めようとする動画などを禁止し、ユーザーみんなが安全で楽しく利用できる世界にすることを目的としています。

「子どもの安全に関するポリシー」とは?

今回話題となっている記載があるのは、いくつかあるポリシーのうち「子どもの安全に関するポリシー」です。これは、YouTubeを利用する未成年がトラブルに巻き込まれたり、搾取(こき使われる・見せ物にされるなど、大人のために未成年自身が辛い思いをするようなこと)されたりするのを防ぐためのポリシーです。

2022年6月7日現在、このポリシーに次のような記載があります。

未成年者が出演するコンテンツで、下記の説明のいずれかに該当するものは、YouTube に投稿しないでください。

(中略)

・未成年者への不適切な注目を喚起するような活動(体の不自然な捻じ曲げや ASMR(聴覚や視覚への刺激によって得られる、心地よい反応や感覚を楽しむ動画)など)を披露するもの。

つまり「未成年者が出演しているASMR動画は投稿してはいけません」という内容です。

このポリシーっていつからあったの?

「未成年者が出演するASMR動画を禁止する」というポリシーはいつからあったのでしょう。 つい最近追加されたのか、あるいは見落としていただけなのでしょうか。

Internet Archiveで確認したところ、日本語版のポリシーでは最も古いアーカイブである2020年11月10日の時点で既に記載がありましたリンク)。また、英語版のポリシーでは2020年8月26日のアーカイブで記載が確認できました。

つまり、このポリシーは2020年には既に記載があったということになります。

なぜ2020年にはあったポリシーが、2022年になって話題になっているの?

おそらく、本ポリシーまたはほかのポリシー違反となった誰かがたまたま記述を見つけて、それが話題になっているものと思います。また、YouTube側の規制が以前に比べて厳しくなっていることも考えられます。

動画の出演者が未成年かどうかというのは、動画からは判断できないことも多いです。特に最近はVTuberの方のASMR動画も増えており、動画からは判別ができません。YouTubeではこうしたポリシー違反の動画については、視聴したユーザーからの通報のほか、動画に写っている画像(実写であれば顔など)や声などからAIを利用してある程度自動的に判断(またはレビュワーによる確認が必要な動画のフィルタリング)を行なっていると考えられます。全て人力で判断するには、投稿動画が多すぎるためです。

例えば未成年がVTuberとして活動しているケースもあると考えられますし、YouTubeとしてはそうした未成年にふりかかるトラブルを防ぐことの方が重要です(トラブルの内容によっては命に関わる場合や、未成年のその後の人生に大きな影響を与える場合があるためです)。

そのため少し過剰に判断されることもあると思いますが、例えば未成年が出演しているという理由で制限を受けた場合は、未成年ではないことを示す(再審査請求)ことで、判断が変わる場合があります。

どんなことに注意すればいいの?

まず、ASMR動画に未成年者が出演している場合は、ポリシー違反ですから動画を削除した方が良いでしょう。そうでない場合は、ほかのポリシーに違反していないことをあらためて確認してみましょう。「露骨な性的表現や冒とく的な表現」などのコンテンツ(年齢制限対象)や「過激なサムネイル」(年齢制限対象、ポリシー違反)などには注意が必要です。

「子どもの安全に関するポリシー」では、子ども向けではないコンテンツに対して「子ども向け」である旨の登録をすることを禁止しています。YouTube Studioの動画詳細から「視聴者」という設定項目で切り替えることができますので、対象年齢が高めの(自動向けではない)コンテンツの場合は設定を今一度確認しておきましょう。

また、子どもが出演している(とYouTubeが判断した)動画については、ポリシーに違反しているかどうかに関わらず、以下のような機能が無効化される場合があります(「子どもの安全に関するポリシー」)。自分の動画がどのようにYouTubeに見られているかの参考にすると良いでしょう。

  • コメント
  • チャット
  • ライブ配信
  • おすすめ動画(動画がおすすめされる方法とタイミング)
  • コミュニティ投稿

なぜ未成年者はASMR動画の投稿が禁止されているの?

実際のところはYouTubeに聞いてみないとわからないのですが、ここでは私の考える理由についてお話しします。

そもそもこのポリシーは、未成年者の行動をむやみに制限したいのではなく「未成年者の心と体を危険にさらすコンテンツ」の投稿を禁止するためのものです。ASMRが「心と体を危険に晒すコンテンツ」として扱われているのは心苦しいですが、以下のような理由が考えられると思っています。

1つは、ASMRはいわゆる性的なコンテンツを含んでいることが理由です。もちろん全てがそうではありませんし、また仮にそうしたコンテンツがYouTubeへ投稿されていなかったとしても同じです。

例えば未成年のあるクリエイターが、YouTubeへ囁き動画を投稿しはじめたとします。その人は動画を見た人にもっと喜んでもらうため、コメントでのリクエストに答えるようになりました。コメントを投稿する側は匿名ですから、自分の見たいリクエストを、ときには公開されている動画よりも過激なものを要求するかもしれません。そうしたリクエストへ応えすぎてしまうと、最終的に本人が傷ついてしまう結果になる可能性もあります。大人であれば、そうしたリクエストは適当にあしらったり、無視したりできますが、未成年だとそうもいきません(判断力がまだ成長していなかったり、大人と子どもの上下関係が影響してしまったり)ので、YouTubeとしてはこうした事態を未然に防ぎたいと考えるはずです。

もう1つは、先ほどの理由とも関連しますが、ASMRは特に「不適切な注目を喚起する」、つまり、人によって変な(時には性的な)見られ方をしてしまう傾向にあると思います。動画そのものが性的でなくても、例えば囁き、咀嚼音、触っているスライムの音などの関係ないようなコンテンツからでも、そのクリエイターに対して過激な感情を抱いてしまうリスクが高いと思っています。

このような話題ではよく「現実とフィクションの区別がついていない人」といった話が出てくるのですが、(特に個人で投稿する)YouTubeの怖いところは動画の向こうに特定の個人がいることです。そうした過激な感情を抱いてしまった大人が、投稿者のことを調べ上げて、リアル凸をしてしまうかもしれません。たとえVTuberの姿だったとしても、スパチャを送ったりすることで関係を作り、リアルの関係に誘うことはできてしまいます。大人であれば(もちろん乱暴やストーカーは許されることではありませんが)誰かに相談をしたり、ある程度自衛したりすることができますが、未成年ではそのような行動が取れないこともありますから、これもYouTube(に限りませんが)としては防ぐべき事態です。

ASMRは性質上どうしても、こうしたリスクがほかの動画と比べると高いと思っています。この辺りが、YouTubeが未成年によるASMR動画の投稿を禁止している理由ではないかな、と(個人的に)考えています。

さいごに

ポリシーには、そのポリシーを定めなければいけない理由が必ず存在します。ポリシーの背景にある理由を考えて、きちんと遵守することが、自分自身を守ることにつながります。

最後に、少し長いですが、あすまる個人の考えについて置いておきます。

ASMR動画というジャンルは、ASMR Mediaにもたくさんのカテゴリーの動画を掲載しているように、さまざまな音をトリガーとしています。YouTubeではそもそも「性的満足を与えることを意図した露骨なコンテンツ」は別のポリシーで禁止されていますが、サムネイルや動画の内容的に、ポリシーに抵触していると思われる動画も少なくありません(そうしたコンテンツを否定するつもりはありませんが、Ci-enやDLsiteなど、きちんと本人確認が行われるプラットフォームでの活動がより望ましいと考えています)。

ASMR Media内でもある程度分けて掲載をするように努力していますが、こうした棲み分けはクリエイター自身による取り組みも進めていかなければいけません。クリエイターがより適切なプラットフォームでの活動に力を入れることにより、それを視聴するユーザーもコンテンツが探しやすくなり、お互い嬉しいのではないかなと思います。

なお、ASMR以外のコンテンツに関して先に規制するべき、という声も見かけましたが、本来規制するべきコンテンツなのであれば、後先なく規制されるべきだと思います。もしポリシー違反であると思うコンテンツを見かけたら、ご自身で通報することで、YouTubeをより良いコミュニティにする手助けができるでしょう。そうした手助けによってYouTubeより多くのユーザーが楽しめるプラットフォームになれば、その分動画を見てくれるユーザーが増えたり、また動画を投稿するユーザーも増えるでしょうから、損ではないはずです。

ASMR Mediaは今後もユーザーの皆さんがさまざまなASMR動画を気軽に楽しめるような場にしていきたいと考えています。ご意見やご要望がありましたら、ぜひTwitterまでお寄せください。

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